基調講演者

真嶋 潤子 教授

大阪大学名誉教授
国際交流基金
関西国際センター所長

「生成AI時代の日本国内の日本語教育政策の現状と方向性」

少子高齢化による人口減少のため、外国人就労者や生活者を多く受け入れようとする日本政府のイニシアティブにより、日本語教育の現場では大きな変化が起きている。

2024年度はエポックメーキングな法律が実施に移された。「登録日本語教員」制度という初の国家資格化と、そのための「日本語教員試験」の実施、「認定日本語教育機関」制度という新しい日本語学校への動きが実行に移された。またそれに先立って日本語教育の内容や方針に関する「日本語教育の参照枠」という指針が示された。この意味するところは何だろうか。

ICTの長足の発達のみならず、「生成AI」という言葉を聞かない日はない昨今、日本語教育でも浮き足立つ言動も見聞きするが、しばし落ち着いて考えてみたい。

谷 淳 教授

沖縄科学技術大学院大学
認知脳ロボティクス研究ユニット教授

「ニューロロボティクス研究による人工及び人間の心の探究」
私はこれまで35年間にわたり、人間の心の発達を理解することを目指し、心理学、現象学、神経科学、統計物理学、情報科学、AIロボティクスといった学際的なアプローチを通じて研究を進めてきました [1]。この探求において中心となる問いは次のとおりです。行動的および言語的経験の相互作用的な学習を通じて、どのように構成的な性質を持つ概念空間が、限られた刺激の中から発達しうるのか? 高次(メタレベル)の認知メカニズムと低次のセンサモータ処理を、自由エネルギー原理のような統一的な枠組みのもとで、どのように説明できるのか? 身体化された認知において見られる循環的因果性は、合理的な心のモデルといかに調和しうるのか? そして、現象学的意識の主観的経験を、科学によって客観的に説明することは可能なのか? 本講演では、これらの問いに対して、構成論的ニューロロボティクス研究を通じて一定の手がかりが得られることを示します。具体的には、ニューロロボット実験において観察される創発的な現象の分析を行い、それらを他の実証的研究の知見と対応づけることによって、心、身体性、意識に関する根源的な問いに取り組むことが可能になるであろう有効な枠組みとして、ニューロロボティクスの可能性を提案します。 [1] 谷 淳 (山形 浩生 翻訳) (2022). 『ロボットに心は生まれるか 自己組織化する動的現象としての行動・シンボル・意識』. 福村出版

金 由美 准教

香港大学
文学院現代語言及文化学院准教授

「オーセンティシティーを重視した寛容性:北東アジア史における日本の固有名詞の扱い方」
香港及び中国各地で学ぶ多くの学習者は日本文化やその社会に関心を持っているものの、日本を含む北東アジア史を中国語以外の言語で学ぶことをためらう者が少なくない。また、英語を媒介語とした授業においても、日本の人名や地名といった固有名詞を学ぶことに難しさや抵抗を感じるといった学生も見られる。自身の経験を交えながら、このような学習者たちが抱える困難の背景にあるものについて触れ、北東アジア史における多様性の意義の理解に必要な支援方法について言及する。
※本基調講演の内容は変更されました。ご理解のほど、お願い申し上げます。

加藤 均 教授

大阪大学名誉教授
大阪大学
日本語日本文化教育センター特任教授

「留学生教育の視点から考えるAI時代の日本研究」

日本国内では、従来、日本に関連する研究は、人文社会学系の領域で高度に専門化された形で行われてきた。近年になって「国際日本学」や「グローバル日本学」と名付けられた分野横断的な学問領域を打ち立てる動きもみられるようになったが、実は、私自身が30年以上従事してきた留学生教育の現場では、日本の実像に迫り、教える必要があったため、「日本研究」が人文学の一分野として強く意識されてきたのである。そういった中、生成AIの利活用により翻訳技術の向上や歴史資料のデジタル化等が進み、教育・研究環境が大きく変容しつつある今、「日本研究」はどうあるべきか、私の専門である仏教思想研究を題材に、教育的側面にも留意し議論を進めていきたい。